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「ふしぎの海のナディア」 幻のエンディング


Category: 興味深い      Tags: 不思議の海のナディア  エンディング  
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「ふしぎの海のナディア」とは発明好きの少年ジャンと謎の少女ナディアが万能潜水艦ノーチラス号に乗り込み冒険を繰り広げる、1990年にNHK総合で放送されたガイナックス製作のアニメで、見たことがある人も多いと思うが、実はお蔵入りになった幻のエンディングがあるらしい。




「ナディア」の幻のエンディングとは?:岡田斗司夫ブロマガ

「使われなかったエンディング」

結局ネオアトランティスは何をしたかったのか。

彼らのプロジェクトである人類を支配するってのは具体的にどういうふうな事なのか。
実はこれ、全部種明かしができていません。棚上げになったまま、お話自体は終わってしまうんです。
これに対して回答を出そうと思えば多分出せるんですけども、庵野監督が選んだ最終回は違うんですね。回答を提示するのではなく、キャラクターの行く末を見せることだったんです。

どうやって、全てのキャラの笑顔をこのお話の最後に作っていくのか。そこに力を注ぎこんだわけです。一年間このアニメを見てきてくれて、みんな絶対にハンソンやサンソン、グランディスを始めとして、ナディアもジャンもエレクトラもマリーも好きになってるはずだと。じゃあ、好きになってる心の決着点を作る必要がある。そこに庵野監督は集中しました。

でもガイナックスの負け組、当時の僕や貞本君、前田君たちが考えたのは、さっきも話したバランス、「心の温度管理」をしながら、冷まさないままでも、どういうふうにすれば、このお話全体が決着するのか。キャラクターではなくて、お話とか指し示すもの自体が、どういうふうに決着するのかってずっと考えていたんです。

なので、最終回のシナリオが上がるまでずっと候補にあったのが、もう一つのエンディングでした。
もう一つのエンディング、ラストは一九四五年です。

僕らが考えていた設定では、まず最終話前半で、大人になったジャンとナディアが描かれます。
ジャンは科学者になり、ナディアはニューヨークタイムスの記者になります。発明好きのジャンが科学者は当然として、ナディアは彼女の持っている正義感や環境に対する危機感がジャーナリストの仕事に生かされて成功するわけです。やっとナディアが「アトランティスの末裔」以外で自分が役立つことを証明できた、そんな彼女の人生を描きたかったんです。

一九〇五年、ジャンは世界で初めて飛行機による大西洋横断に成功します。パリからニューヨークまで飛行機で飛んできたジャンをニューヨークで迎えるのが、ニューヨークタイムスのナディア記者。二人の恋の成熟も予感させるクライマックスです。

で、ラストのラストは一九四五年。月日は四十年も流れて、第二次大戦が終結する瞬間です。
なぜ一九四五年なのか。

実際の最終回であったナディアのお兄さんを生き返らせた残酷なやり方を、ガーゴイルは「これが科学の力だ」と言うシーンがありました。それを聞いたジャンは「科学の力……」とつぶきます。
これは一話からずーっと、ジャンというキャラクターが信じてきた科学というものの根拠を疑った瞬間です。
それまでもちろん、ノーチラス号の中で人が死んだりはするんですけども、紆余曲折はありながらも科学というものに対してジャンは、否定的な考えを持ったことがない。
科学は、色々悪い人がいれば悪いように使われるかもしれないけど、人間を幸せにするための道具であり文明の象徴であって、人が喧嘩したり奪い合いをするのも、たとえば科学の力で食料が一杯出来ればそういうふうなことがなくなる、天国への階段だというふうに思ってる。

ジャンは、科学が発展する方向に必ず人々の幸せが存在すると信じています。科学を信仰しているんです。

一九〇五年、ジャンは単独大西洋横断をして、ナディアがそれを迎えてくれる。このシーンはジャンの人生の頂点です。
ジャンにとって科学は輝いて見えます。

しかし一九四五年のパリ、ナチスドイツに蹂躙されたパリの街並がどこまでも広がります。その片隅で、老夫婦になったジャンとナディアが終戦のニュースをラジオで聞いています。
「ヒロシマとナガサキで新型爆弾が使用され、日本は降伏した。正義の科学の力でようやっと戦争は終結した」という放送です。
ジャンは科学者ですから、その爆弾とは何を意味するのか、想像がつきます。ついに人類は核兵器を使ってしまった。人間がまたガーゴイルに一歩近づいたと解るわけですね。

開けてはならないパンドラの箱。自分たちが命を賭けて守ったはずの箱。ナディアのお父さんが命を賭けて人類から隠して、滅ぼした筈の箱。
ガーゴイルが持っている悪の科学の力を、人類自身の手によって開けられた瞬間だと、ジャンは知ってしまうんです。

日本に新型爆弾が落ちて、もちろんパリの街は万歳万歳です。連合国が勝ったんだから。実際の歴史でも、世界中が「これで戦争が終わった」とお祭り騒ぎでした。
当時のアメリカでは、アトミック・カクテルという飲み物が流行りました。「俺たちの原子爆弾のおかげで別れた恋人が再開した」というレコードが吹き込まれて発売され、正義の力「核兵器」みたいなキャンペーンがはられました。
それは、政府が「核兵器が良い物だ」というキャンペーンをしようとしたのではありません。
「あの呪わしいファシスト達が起こした戦争を核兵器がようやくおさめてくれた」と言う勝利の凱歌、民主主義の凱歌だったんです。

でもジャンとナディアはそうではないことを、少年少女時代に知っています。

科学の力をジャンはなんとか信じようとしていたけど、二度の世界大戦と原子爆弾の投下によって決定的に心が折れてしまうんです。

ラストシーン。
年老いたナディアがラジオのスイッチを消します。同じく年老いたジャンに「ジャン、あれは出来たの?」と聞く。「出来たよ」って屋根裏に行くと、すごく古びたロケットがあるんです。ジャンがそのシーツをぱっとはがすと、老夫婦のジャンとナディアは若い頃の姿に戻って、ピカピカのロケットに乗って宇宙へ飛んでいく。

そういう最終回を僕らは考えてたんです。

(中略)


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